歓喜の声を上げると、依頼人はそれを握り締めた。
「取り返してくれたのですね!」ホールダー氏はあえいだ。「私は救われました!私は救われました!」
喜びの反動は深い嘆きと同じほど激しいものだった。そしてホールダー氏は取り戻された宝石を胸に抱きしめた。
「もう一つあなたには負債があります、ホールダーさん」シャーロックホームズはいくぶん厳しく言った。
「負債!」ホールダー氏はペンを取り上げた。「額をおっしゃってください。支払います」
「いえ、私に対する負債ではありません。あなたの負債とは、素晴らしい青年、あなたの息子さんに謙虚に謝罪しなければならないということです。私に息子がいて、ああいう行動をとったとすれば、私は自分の息子を誇りに思ったでしょう」
「それでは息子が盗んだのではないのですか?」
「昨日そう申し上げました。今日も再度申し上げます。息子さんではありません」
「確かですか!それでは急いで息子のところに行って、真相が判明したと教えなければ」
「息子さんは既に知っています。私が事件を解決した時、息子さんに会ってきました。息子さんが話そうとしないので、私の方から言ってやりました。結局、息子さんは私が正しいと認めざるを得なくなりました。そしてほんのちょっとだけ、私がまだ完全にはよく分かっていなかった細かな部分を追加してくれました。しかし、宝石が見つかったのですから、もう息子さんも隠し立てはしないでしょう」
「お願いですから、教えてください。この途方もない謎の真相を!」
「そのつもりです。私が事件をたどった通りに順序立てて説明しましょう。まず最初に言わせていただきたいのは、最も申し上げにくく、またあなたにとっても聞くのが辛いことでしょうが、ジョージ・バーンウェルと姪御さんのメアリーは、共謀していました。二人は一緒に逃亡中です」
「メアリーが?あり得ん!」
「残念な事に、あり得るどころか、動かしようのない事実なのです。あなたがジョージを家族の中に招き入れるのを承諾した時、あなたも息子さんも、この男の真の人格を知らなかった。ジョージはイギリスで最も危険な男の一人です。借金で身を崩し、完全にやぶれかぶれの悪党で、愛情も良心もない男です。ジョージがそれまで百人の女にしたように、メアリーさんにも誓いの言葉をささやいた時、彼女はこんな男の正体を何一つ知らなかったのです。メアリーさんはそれで舞い上がり、自分だけがジョージの本当の心を知ったと思ったのです。ジョージが何を言ったかは分かりませんが、ともかくメアリーさんはジョージの手先となり、ほとんど毎日のように彼と会う事になりました」
「信じられない。そんな事は信じないぞ!」ホールダー氏は青ざめて叫んだ。
「それでは、昨夜あなたのお宅で起きた事をお話しましょう。メアリーさんは、あなたがご自分の部屋に下がったと思い、抜け出して厩舎への道に続く窓越しに恋人ジョージと話していました。ジョージの足跡が雪の上に続いており、彼は長い間そこに立っていました。メアリーさんはジョージに宝冠の事を話しました。その話を聞いたジョージは、金に対する欲望に火がつき、メアリーさんを意のままにしました。メアリーさんがあなたを愛していたのは嘘ではなかった。しかし一人の男に夢中になると他の愛がすべて消えてしまう女性がいます。そして彼女もその一人だったに違いない。メアリーさんはジョージの命令を聞き終わった瞬間、あなたが降りてくるのに気付き、急いで窓を閉めると、一人の使用人と木製の義足の恋人の話をあなたにしました。それはすべて全く本当の事でしたがね」
「息子さんは、あなたと話した後、寝室に行きました。しかし息子さんはクラブの借金のことが不安で寝付けませんでした。真夜中になって、息子さんは自分の戸口の前を静かな足音が横切ったのを聞き、起き上がって外を見て、メアリーさんが人目を忍ぶかのように歩いているのを見て驚きました。メアリーさんは廊下を通り、あなたの衣裳部屋に消えました。びっくり仰天し、息子さんはちょっと服を引っ掛けて、この奇妙な行動の続きを確認しようと暗闇で待ち構えました。すぐにメアリーさんは部屋から出てきました。廊下のランプの明かりで、彼女が貴重な宝冠を手に持っているのが見えました。メアリーさんは階段を降り、そして息子さんは恐怖に震えながら、走って行ってあなたのドア近くのカーテンの後ろに隠れました。そこから階下の広間で何が起きているかを見ることができました。メアリーさんは静かに扉を開け、闇の中の誰かに宝冠を手渡し、もう一度窓を閉めると、カーテンの後ろに隠れている息子さんのすぐ近くを通り過ぎ、急いで自分の部屋に戻りました。息子さんは、この一部始終を見ていました」