コンプリート・シャーロック・ホームズ
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第一報が小さな地元交番に届いたのは、11時45分だった。この時の担当は、サセックス州警察のウィルソン巡査部長だった。セシル・ベーカーが、非常に興奮して玄関口を駆け上がり、猛烈にベルを鳴らした。恐ろしい惨劇が領主邸で起きて、ジョン・ダグラスが殺害された、 ―― これが息を切らした彼の話した内容だった。彼は急いで邸に戻り、数分とたたずに巡査部長が続いた。巡査部長は、深刻な事態が発生したという一報を直ちに地方警察に送った後、12時少し過ぎに、事件現場についた。

領主邸に着いて、巡査部長は、跳ね橋が下ろされ、窓に明かりがつき、使用人全員が大変な混乱と恐怖の状態にあるのを知った。真っ青な顔をした使用人達は、ホールで身を寄せ合っており、怯えた執事は戸口で手を堅く握っていた。セシル・バーカーだけが自分の感情を制御できているようだった。彼は入り口に一番近い扉を開けており、巡査部長についてくるように手招きした。その時、活発で有能な開業医のウッド医師が村から到着した。三人の男は一緒に殺人のあった部屋に入った。恐怖に打ちひしがれた執事がすぐ後ろに続き、恐ろしい現場からメイドを締め出すために後ろで扉を閉めた。

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男は部屋の真中で手足をぶざまに伸ばして仰向けに倒れて死んでいた。彼は夜着の上からピンクのガウンを羽織っているだけだった。足には室内用スリッパを履いていた。医者は彼の側に膝をつき、テーブルの上にあった手提げランプを下ろした。犠牲者を一瞬見ただけで、医者の存在は不要なものだと分かった。男の傷は凄まじいものだった。胸の上に奇妙な武器が置かれていた。引き金から前一フィートくらいの場所で銃身が切り詰められた散弾銃だった。これが至近距離から発射され、彼は全ての散弾を顔に受け、頭部がほとんど粉々に吹き飛んだのは明らかだった。引き金は針金で繋がれ、二発が同時に発射されて、より破壊力を増すようになっていた。