コンプリート・シャーロック・ホームズ
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「次に、この奇妙な犯罪の動機を考えなければなりませんでした。これをつかむために、真っ先に、初めに起きたアクトン氏宅強盗の理由を解明しようと試みました。僕が大佐から聞いた内容から理解したところでは、アクトン氏とカニングム家との間で訴訟が継続中でした。もちろんすぐに、この訴訟を無効にできる可能性がある何かの文書を入手しようというもくろみで、カニングハム家が図書室に押し入ったのではないかと思いつきました」

「まさにそのとおりです」アクトン氏が言った。「泥棒の目的は他に疑いようがありません。私はカニングハム家の現在の敷地の半分を要求する明確この上ない申し立てをしています。そしてもし彼らが一つの書類を手に入れれば、 ―― それは幸運にも私の弁護士の金庫の中ですが ―― 、きっとこの訴訟は無効になっていたでしょう」

「そのとおり」ホームズは微笑んで言った。「それは危険で無謀な試みでした。このやり方を見ると、アレクが主犯だったと思われます。何も見つからなかったので、彼らは容疑の目をそらせて普通の強盗に見せかけるため、手当たりしだい物を盗っていくはめになりました。ここまでは全部明白でしたが、まだ多くが曖昧なままでした。僕が何より望んでいたのは、手紙のなくなった部分を手に入れる事でした。僕はアレクが死んだ男の手からその紙を破りとったと確信していました。そしてそれをガウンのポケットに突っ込んだに違いないということにも、ほぼ確信を持っていました。そこ以外、どこに入れる場所があるでしょうか?問題はただ一つ、まだそこに残っているかです。確認するために苦労する価値はありましたので、これを目当てにみんなで一緒に家に上がりました」

「覚えているでしょうが、カニングハム親子と台所の扉の外で一緒になりました。もちろん、彼らがこの紙の存在を思い出さないようにするのは最も重要でした、もし思い出せば、当然すぐにその紙を破棄するでしょう。フォレスター警部は、私たちが興味を持っている重要な事を、あわや親子に言うところでした。その時、なんとも上手い具合に、僕はある種の発作で倒れ、話題が変わりました」

「なんとまあ!」ヘイター大佐は笑って叫んだ。「あなたの発作は仮病で、我々はみんな無駄な心配をしていたと言うおつもりですか?」

「医者の目から見ても、実に見事な出来栄えだった」いつも何か新しいずる賢さで私に一杯食わせるホームズを脅威の目で見ながら叫んだ。

「よく役に立つ技なんだよ」ホームズは言った。「僕は回復した後、ちょっと巧妙な工夫とでも言うべき手段を使って、なんとかカニングハム氏に twelve という単語を書かせました。それがあれば、手紙の twelve と比較できるかもしれませんからね」

「ああ、そうだったのか!」私は叫んだ。

「君が僕の衰弱に同情してくれたのはよく分かったよ」ホームズは笑いながら言った。「君につらい思いをさせる事は分かっていたんだが、本当に申し訳なかったね。その後、私たちは一緒に上の階に上がりました。それから部屋に入って、ガウンが扉の後ろにかかっているのを見つけたので、僕はテーブルをひっくり返して、カニングハム親子の注意を一瞬引き付け、こっそり抜け出してポケットを探ろうと企てました。しかし、僕が紙を手にするや否や、 ―― それは思ったとおり一つのポケットの中にありましたが ―― 、カニングハム親子が覆いかぶさってきました、あなた方が素早く味方として救出してくれなかったら、カニングハム親子はあの時あの場所できっと僕を殺していたでしょう。実は、息子が首を絞め、僕の手から紙を奪おうとして父親が手首をひねった感覚がまだ体に残っています。彼らは僕が全てを見抜いたに違いないと悟りました。絶対に大丈夫だと思っていたところから、突然絶体絶命の立場となり、カニングハム親子は自暴自棄になってしまいました」

「私はあの後、父親のカニングハム氏と犯罪の動機に関してちょっと話をしました。彼は従順でした。しかし息子は完全な悪党でした。もし拳銃を手にすれば、自分の頭だろうが他の誰かの頭だろうが、すぐにでも撃ち飛ばす覚悟ができていました。有罪確実の証拠を握られたと分かった時、カニングハム氏は何もかもあきらめて洗いざらい話しました。どうやら、ウィリアムは彼らがアクトンの屋敷に強盗に入った夜、二人の主人の後をそっとつけたようです。こうしてウィリアムはカニングハム親子に対して有利な立場に立ち、秘密を暴くと脅して彼らから金をゆするようになりました。しかし、アレクはそんな取引をするには危険すぎる男でした。アレクの立場で考えると、この田舎を揺るがしている強盗騒動を、自分の脅迫者を上手く葬り去る絶好の機会と見なすとは、明らかに天才的なひらめきでした。ウィリアムはおびき出されて、撃たれました。そしてもし、彼らが手紙を全部取り返し、身の回りにもう少し注意を払っていれば、まったく疑惑がかからない可能性は非常に高かった」

「それで手紙は?」私は尋ねた。

シャーロックホームズは繋ぎ合わせた手紙を我々の前に置いた。

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「ほぼ僕が予想していたとおりです」ホームズは言った。「もちろん、アレク・カニングハムとウィリアム・カーマンとアニー・モリソンの間にどんな関係があったかまだ分かりません。結論から言えば、ウィリアムはこの罠に見事に引っ掛りました。pとgの書き終わりに親子の痕跡があるのは、きっと興味深いはずです。iの点がないという父親の筆跡も非常に特徴的です。ワトソン、田舎でゆっくり休むと言うのは明らかに成功したようだ。明日は活力のみなぎった状態でベーカー街に戻れるよ」