バーディ・エドワーズの捕獲 2 | バーディ・エドワーズの捕獲 3 | バーディ・エドワーズの捕獲 4 |
彼は家に戻り、目前に迫った恐ろしい夜のための準備を整えた。最初に彼はスミス&ウエッソンの拳銃を掃除し、油を差し、弾を込めた。その後、彼は探偵を罠にかける部屋を調べた。そこは真ん中にモミのテーブルがあり、そして片側に大きなストーブがある大きな部屋だった。それ以外の壁には、それぞれ窓があった。窓には鎧戸がなく、薄いカーテンが引かれているだけだった。マクマードこれを注意深く調べた。きっと、秘密の会議にはこの部屋が無防備だという考えが浮かんだに違いない。しかし、家は道から離れているのでそれは大して重要ではなかった。最後に彼は同居人とこの件を話し合った。スキャンランはスカウラーだったが、悪事をするには気の小さ過ぎる男だった。彼は気が弱くて、言われたことには歯向かえなかったが、時々無理に手伝わされる流血騒ぎを、心中で恐れていた。マクマードは彼に何が企てられているか、手短に話した。
「もし俺がお前なら、マイク・スキャンラン、俺は一晩この家を離れている。朝が来るまでに、血なまぐさい事件が起きるだろう」
「そうだな、それじゃ、マック」スキャンランは答えた。「やる気がないわけじゃないが俺には図太い神経が無い。ダン経営者があの炭鉱で撃たれるのを見たが、あれは俺が我慢できる限界を超えていたよ。俺はお前やマギンティのように、この仕事に向いた男じゃないな。支部に悪い印象が残らないなら、俺はお前の言った通り、今夜は家から離れているよ」
男達は予定通り、絶好の時間にやってきた。彼らは表向きはいい服を着て清潔で善良な市民だった。しかし、この厳しい口元と無慈悲な目の顔つきを見れば、バーディ・エドワーズにはほとんど望みがないことが読み取れただろう。部屋の中いたのは、これまで12回以上その手を血に染めた事がある男ばかりだった。彼らは肉屋が羊を殺すのと同じくらい殺人には慣れていた。
もちろん、その中の一番は、見かけにおいても罪においても、恐るべき支部長だった。秘書のハラウェイは、細身で細く痩せた首と神経質にぴくぴく動く手足を持った、無慈悲な男だった。職務である財政に関しては、買収に応じない忠誠心を持っていたが、それを除けば、誰に対しても正義や忠誠など全くなかった。会計係のカーターは、中年の男で、感情を表さないちょっとむっつりした顔つきで、焼けた羊皮紙のような肌をしていた。彼は有能なまとめ役だった。暴力事件の実行計画は、ほとんど全て彼の陰謀に満ち溢れた頭脳から生まれたものだった。ウィラビー兄弟は活動的な男達だった。背が高く、決意を秘めた顔を持ったしなやかな青年だった。彼らの仲間の、タイガー・コーマックは、太った浅黒い青年だったが、その恐ろしい性格で同僚達からも恐れられていた。これが、ピンカートンの探偵を殺すためにその夜マクマードの家に集まった男達だった。
マクマードはテーブルの上にウィスキーを置いていた。そして一同は、これからの仕事のためにとりあえず景気付けをした。ボールドウィンとコーマックはすでに半分酔っていた。そして酒によって彼らの残虐性は完全に引き出されていた。コーマックはストーブに一瞬手を触れた。夜はまだ寒かったので、それには火が入っていた。
「こりゃ、いい」彼は悪態をつきながら言った。
「そうだな」ボールドウィンは意味を察して言った。「もしここに押し付けたら、本当のことを聞きだせるだろう」
「本当のことは聞きだせるさ、心配するな」マクマードは言った。彼は、この一件の全責任が圧し掛かっているのに、それでも冷静で無頓着な態度をとっており、鉄の神経を持っているようだった。他の人間はそれに気づいて称賛した。
「お前は奴に対抗できる男だ」支部長は満足げに言った。「お前が首を締めるまで奴は全く気付かないだろう。窓に鎧戸がないのは残念だな」
マクマードは一つずつ窓に寄ってカーテンをきっちりと引いた。「これで誰ものぞき見できん。そろそろ時間が近付いたな」
「奴は来ないかもしらんな。危険を嗅ぎつけるかもしらんぞ」秘書が言った。
「奴は来る、心配いらん」マクマードが答えた。「彼はあんたが会いたがっているのと同じくらい来たがっている。聞いたか!」
全員は蝋人形のように固まって座っていた。グラスを口元に持っていく途中で止めた者もいた。ドアを三回ノックする大きな音が聞こえた。
「シッ!」マクマードは手を上げて注意した。勝ち誇ったような視線が交わされ、隠し持った武器に手が伸びた。
「音を立てるな、命がかかってるぞ!」マクマードはこうささやくと、部屋から出て行き、慎重に扉を閉めた。
殺人者達は耳を澄ませて待った。彼らはマクマードが廊下を歩いていく足音を数えた。その後、玄関の扉を開く音が聞こえた。短く、挨拶の言葉が交わされた。その後、新しい足音が中に入って来て、聞きなじみのない声が聞こえてきた。一瞬の後、扉がバタンと閉まり、錠の中で鍵が回る音がした。彼らの獲物は罠にかかったのだ。タイガー・コーマックは恐ろしい声で笑ったが、マギンティ支部長が彼の口を大きな手でぱっと押さえた。
「静かにしろ、この馬鹿!」彼はささやいた。「お前は俺達を殺す気か!」
隣の部屋で話をしている不明瞭なつぶやきがあった。果てしなく長く思われた。その後、扉が開き、マクマードが唇に指を当てて現われた。
彼はテーブルの端にやって来て彼らを見回した。彼には微妙な変化が表れていた。彼の態度は大きな仕事をしようとする人間のものだった。彼の顔は岩のように断固としたものになっていた。彼の目は眼鏡の奥で激しい興奮に輝いていた。彼ははっきりと場の主導権を握っていた。男たちは非常な興味を抱いて彼を見つめた。しかし彼は何も言わなかった。彼は相変わらず奇妙な視線で、男達を一人ずつ見回していた。
「さあ!」遂に支部長のマギンティが叫んだ。「彼はここに来たのか?バーディ・エドワーズはここにいるのか?」
「そうだ」マクマードはゆっくりと答えた。「バーディ・エドワーズはここにいる。俺がバーディ・エドワーズだ!」
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