コンプリート・シャーロック・ホームズ
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「この出来事があってから二日間、私は家にいました。そして私の知る限り、妻は約束をしっかりと守っているように見えました。妻は一度も家を空けていなかったからです。しかし三日目、私は決定的な証拠をつかみました。あれほど真剣に約束したにもかかわらず、妻は、妻としての務めも夫も投げ出させるようなこの秘密を断ち切ることが出来なかったのです」

「その日、私は街に出掛けていました。しかしいつも乗っている3:36の列車ではなく、2:40の列車で戻って来ました。私が家に入ると、メイドが驚いた顔でホールに駆け込んで来ました」

「『妻はどこだ?』私は尋ねました」

「『散歩に出かけたと思いますが』メイドは答えました」

「私の心はすぐに疑惑で一杯になりました。私は二階に駆け上がって妻がいないことを確認しました。その時、たまたま二階の窓からちょっと外を覗くと、さっき話したメイドが、あの家へ向かって野原を駆けていくのが見えました。その時、もちろん私はどういうことか完全に理解しました。妻はあの家へ行き、もし私が帰ってきたら呼びに来るよう、メイドに頼んでいたのです。私は怒りに震え、この事件にきれいさっぱり決着をつけてやると決心し、階段を駆け下りて野原を突っ切りました。妻とメイドが慌てて道を戻って来るのが見えました。しかし私は立ち止まって話をしませんでした。あの家にある秘密が私の生活に影を落としている。私は誓いました。何が起きようともこれ以上秘密のままにしてはおかない。私は家に着いてもノックさえせず、ノブを回して廊下に駆け込みました」

「一階はすべてが穏やかで静かでした。台所ではヤカンが火の上で音を立てていました。そして大きな黒猫がカゴの中で丸まって寝ていました。しかし私が前に会った女性の影も形もありませんでした。私は別の部屋に駆け込みました。しかしそこも同じように人気がありませんでした。それから階段を駆け上がりました。しかし二階にあった二つの部屋も空っぽでした。どこを探しても、誰もいませんでした。家具と絵は、ごくありきたりで趣味の悪いものでしたが、私が奇妙な顔を見た窓がある部屋は別でした。そこは心地よく上品でした。そして、マントルピースの上に妻の全身写真が置かれているのを見た時、すべての疑念が激しく苦々しい怒りの炎へと変わりました。それはたった三ヶ月前に私の要望で撮らせたものでした」

「私はこの家が完全に空家だということがはっきりするまで、居座りました。その後、私はこれまで経験した事が無いほど重苦しい気持ちでそこを出ました。家に帰ると妻が玄関口に出て来ました。私は非常に傷つき怒りを覚えていて、口をきく気になれなかったので、妻を押しのけて、書斎へ行きました。しかし妻は私が扉を閉める前に追って来ました」

「『約束を破ってごめんなさい、ジャック』妻は言いました。『しかし全ての事情が分かったら、きっと私を許してくれると思うの』」

「『では、何もかも話してくれ』私は言いました」

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「『できないの、ジャック、できないの』妻は叫びました」

「『君が僕に、あの家に住んでいるのが誰で、あの写真を与えたのが誰かを言うまで、僕達の間に信頼はありえない』私は言いました。そして妻を振り払って家を出ました。それが昨日のことです、ホームズさん。それから妻には会っていません。この奇妙な事件に関しては、これ以上何も知りません。これは私たちの間にやって来た初めての影です。これで私は非常に動揺して、何が一番良いのか分からなくなっています。今朝突然、あなたこそ私に助言してくれる人だと気がつき、こうして急いでやって来ました。そして、あなたに包み隠さずお話しました。もし私の話で分かりにくい点がありましたら、質問してください。ですが、まず、どうすべきかを今すぐ教えてください。私はこの苦痛にこれ以上耐えられません」