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しかし結果的に我々の調査がそれほど冒険的な最後を迎えることはなかった。興奮した田舎男が部屋に駆け込んできたのは、五時ごろだった。その時、三月の夕べはすでに暮れかかっていた。
「奴らは出て行きました、ホームズさん。最終列車で出て行きました。女性は逃げました。私は彼女を下の馬車で連れて来ています」
「でかした、ワーナー!」ホームズがさっと立ち上がって叫んだ。「ワトソン、隙間は急速に狭まっている」
馬車の中に神経衰弱で半分気を失った女性がいた。彼女はワシ鼻で、やつれた横顔にはごく最近大変な目にあった痕跡が残っていた。彼女の頭はぐったりと胸に垂れていた。しかし頭をもたげてぼんやりした目をこちらに向けた時、彼女の瞳は大きな灰色の虹彩の真中で黒い小さな点のようになっていた。阿片を盛られていたのだ。
「言われたように門を見張っていたんです、ホームズさん」首になった庭師のスパイが言った。「馬車が出てきた時私は駅まで後をつけました。彼女は夢遊病者のようでしたが、奴らが彼女を列車に乗せようとした時、意識を取り戻して暴れました。奴らは客車に押し込みました。彼女は必死でまた出て来ました。私は彼女を手助けして馬車に乗せ、ここに来ました。私が彼女を連れ去る時に客車に見えた顔は忘れられません。もし奴が自由に行動できていれば私の命はなかったでしょう、・・・あの黒い嫌な目つきの黄色い悪魔野郎・・・」
私達は彼女を上の階に運び、ソファに寝かせ、すごく濃いコーヒーを二杯飲ませると、すぐに彼女の頭の阿片の霧が晴れた。ホームズはベインズ警部を呼び、状況を手短に説明した。
「こ、これは・・・・、私が求めていたまさにその証人です」警部はホームズの手を握りながら暖かく言った。「私は最初からあなたと同じ手がかりを追っていました」
「何!君はヘンダーソンを追っていたのか?」
「ホームズさん、あなたがハイ・ゲイブルの生垣の中を這っている時、私は植え込みの木の上にいてあなたを見下ろしていました。先に証拠をつかむかのはどちらかという状況でした」
「では、どうして使用人を逮捕したんだ?」
ベインズは含み笑いをした。
「私は、自称ヘンダーソンが疑われていることを感づいていて、自分の身に危険があると思っている限り、なりを潜めて行動を起こさないと確信していました。私は彼に、警察の目が彼から離れたと信じさせるため、間違った男を逮捕しました。そうすれば彼が逃げ出すという事は分かっていました。そしてその時、バーネット嬢の身柄を確保する機会が得られると思ったのです」
「ホームズは警部の肩に手を置いた」
「君は、警察で偉くなるだろう。君には才能と直感がある」彼は言った。
ベインズは喜びに顔を赤らめた。
「私は私服警官を今週ずっと駅に張り込ませていました。ハイ・ゲイブルの人間がどこへ行こうとも見失わないでしょう。とはいえ、バーネット嬢が逃走したら、追跡の遂行が困難になったに違いありません。しかし、あなたの手配した男が彼女の身柄を確保し、何もかも上手く行きました。彼女の証言なしに逮捕はできません、これは確かです。ですからなるべく早く供述を得られれば、その方がありがたいのです」
「どんどん回復しているな」ホームズは家庭教師の方に目をやって言った。「しかし教えてくれ、ベインズ、このヘンダーソンという男は何者なんだ?」
「ヘンダーソンは」警部が答えた。「ドン・ムリーリョ、かつてサンペドロの虎と呼ばれた男です」
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