コンプリート・シャーロック・ホームズ
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マクマードは何か試練が待っていると知らされていたが、誰もどんな事かを言おうとはしなかった。彼は今、真面目くさった二人の同僚によって、別の部屋に案内された。厚板の仕切りの向こうから、中にいる参列者が口々に低い声で話すのが聞こえた。一、二度自分の名前が話しに出てくるのが聞こえた。そして彼は、自分の資格について話し合いが持たれていると分かった。その後、緑と金の肩帯を肩から斜めに掛けた中の見張り役が一人入ってきた。

「彼を縛って、目隠しして、中に入れろと支部長が命じられた」彼は言った。

三人の男は彼の上着を脱がせ、右腕の袖を捲り上げ、最後に両腕の肘の上にロープを回して堅く縛った。次に、頭と顔の上半分に黒い分厚い帽子を被せたので、彼は何も見えなくなった。彼はその後集会場に連れて来られた。

帽子は非常にきつく全く何も見えなかった。彼は回りの人間が何かヒソヒソと話すのが聞こえた。その後、耳の覆いの向こうからマギンティの声が鈍く遠くに聞こえた。

「ジョン・マクマード」声がした。「お前はすでに由緒ある自由民団の一員か?」

彼はうなずいて同意した。

「お前の支部はシカゴ29番か?」

彼はもう一度うなずいた。

「暗い夜は不愉快だ」声が聞こえた。

「そうだ、旅をする余所者には」彼は返答した。

「雲は厚い」

「そうだ、嵐が近付いている」

「同胞達よ、よろしいか?」支部長が尋ねた。

おおむね承諾するようなつぶやきが漏れた。

「同志よ。合言葉のやりとりによって、我々はお前が本当に我々の仲間だと分かった」マギンティは言った。「しかし、我々はお前に知らしめるだろう。この地区とこの地方の別の地区で、我々はある儀式を行っている。そして我々独特の職務がある。それは善人に要求されるものだ。試験を受ける覚悟はできているか?」

「できている」

「おまえは勇気があるか?」

「ある」

「一歩前に踏み出してそれを証明せよ」

その言葉が話されると同時に、彼は両目に堅く尖ったものを感じた。目に押し付けられているので、前に動けば両目がつぶれる危険がありそうだった。それにもかかわらず、彼は勇気を出してしっかりと歩を進めた。そうすると、圧迫は消えてなくなった。称賛の低いざわめきが起きた。

「彼は勇気がある」声がした。「苦痛には耐えられるか?」

「それも同じだ」彼は答えた。

「試せ!」

前腕に恐ろしい痛みが走り、彼は叫び声を上げるのをこらえるのがやっとだった。彼はその突然の衝撃に意識が遠のいたが、唇を噛み、手を握り締めてその苦痛を表さなかった。

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「まだまだだ」彼は言った。

今度は大喝采が起きた。この支部ではこれほど見事なデビューはなかった。彼は背中を叩かれ、頭から帽子が引き抜かれた。彼は目をしばたかせ、同志達が祝いを言う中、笑顔で立っていた。