コンプリート・シャーロック・ホームズ
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四日後、ホームズと私はウェセックス・カップを見るために、再び列車でウィンチェスター*に向かった。ロス大佐は約束どおり駅の外まで迎えに来ており、我々は彼の馬車で街の向こう側にある競馬場に向かった。ロス大佐はむっつりした顔で、極限までよそよそしい態度だった。

「私の馬は現れていませんが」ロス大佐は言った。

「馬を見れば分かるんですね?」ホームズは言った。

ロス大佐はかっとなった。「二十年間競馬界にいて、そんな質問をされたことは今まで一度もない」ロス大佐は言った。「白い額と前足の先の斑を見れば、子供でもシルバー・ブレイズだと分かる」

「オッズはどうなってます?」

「ええ、妙ですね。昨日は十五対一で買えたのに、どんどんと差がなくなり、今は三対一でもなかなか買えません」

「フン!」ホームズは言った。「誰か情報をつかんだな。それは間違いない」

馬車が正面特別観覧席の囲いの前に来た時、私は参加馬の掲示をちょっと見た。

ウェセックス杯。50ソブリン。それぞれ半額没収、追加料1000ソブリン、四歳と五歳馬。二着300ポンド。三着200ポンド。新コース(一マイル五ハロン)。
1. ヒース・ニュートン氏のザ・ニグロ。赤帽。シナモンジャケット。
2. ウオードロー大佐のピュージリスト。ピンク帽。青と赤のジャケット。
3. バックウォーター卿のデズバラ。黄帽と黄袖。
4. ロス大佐のシルバー・ブレイズ。黒帽。赤のジャケット。
5. バルモラル公爵のアイリス。黄色と黒の縞模様。
6. シングルフォード卿のラスパー。紫の帽子。黒袖。

「もう一頭は出走を取り消して、あなたの言葉に全ての望みを託しました」ロス大佐は言った。「おや、これは何だ。シルバー・ブレイズが本命だと?」

「5対4でシルバー・ブレイズ!」賭屋がうなった。「5対4でシルバー・ブレイズ!5対15でデスボラ!5対4でそれ以外!」

「出走馬が来る」私は叫んだ。「全部で六頭いる」

「全部で六頭?それでは私の馬も走っているのか」ロス大佐は非常に興奮して叫んだ。「しかし見えんぞ。私の色は通っていないが」

「まだ五頭しか通っていない。次に違いない」

私が話していると計量の囲いから、力強い栗毛の馬がさっと出てきた。そして、大佐の有名な黒と赤の騎手を背中に乗せて、駆足で私達の前を過ぎ去った。

「あれは私の馬ではない」ロス大佐は叫んだ。「あの馬には体に白い毛の部分がない。何をしたんですか、ホームズさん?」

「まあ、まあ、どう走るか見ましょう」ホームズは動じずに言った。数分間、ホームズは私の双眼鏡で眺めていた。「こりゃいい!素晴らしいスタートだ!」ホームズは突然叫んだ。「ほら、あそこです。カーブを曲がって来る!」

我々の馬車から、馬が直線にさしかかる素晴らしい光景が見えた。六頭の馬は、カーペーット一枚分くらいの広さにひとかたまりとなっていた。だが途中で、黄色のメイプルトンが先頭に出た。しかし、正面に来るまでにデズバラの逃げ足が急に衰え、大佐の馬があっさり差すと、デズバラに六馬身以上の差をつけてゴールした。かなり遅れた三着は、バルモラル公爵のアイリスだった。

「ともかくレースに勝った」ロス大佐は額の汗を手で拭いながらあえいだ。「実を言うと何がなんだかさっぱりです。ちょっと秘密が長すぎると思いませんか?ホームズさん」

「そうですね、大佐。そろそろ何もかも分かるでしょう。皆で行って一緒に馬を見ましょう。ほら来ましたよ」ホームズは私たちが計量の囲いに向かう時、こう言った。そこはオーナーか、その知り合いだけが入場できる場所だった。「アルコールで、顔と足をちょっと洗えば、紛れも無くシルバー・ブレイズだと分かるでしょう」

「これは驚いた!」

「私はあるペテン師がこの馬を持っているのを見つけ、勝手ながら返してもらった時のまま走らせました」

「ホームズさん、驚きました。馬は絶好調のようです。こんなに調子が良かったことはありません。あなたの能力を疑ったりして本当に申し訳ない。あなたは私の馬を取り戻し、素晴らしい働きをしてくださいました。あとはジョン・ストレーカーの殺人犯を捕まる事ができれば、一安心できるのですが」

「すでに捕まえました」ホームズは静かに言った。