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扉の上に闘鶏の看板がある不気味で汚らしい宿に近づいたとき、ホームズは突然うめき声を上げ、私の肩をつかんで体を支えた。彼は足首をひどく捻挫して、自分ではどうすることもできなくなってしまった。彼はやっとのことで、色黒でずんぐりした体形の初老の男が黒いクレイパイプを吹かしている戸口まで足を引きずって行った。
「こんにちは、ルーベン・ヘイズさん?」ホームズは言った。
「あんたは誰だ。なぜ俺の名前がそんなにすらすら出てくる?」陰険な田舎者の目が不審そうに光った。
「そうだな、あんたの頭の上の板に書いてあるよ。家の主人たる男を見分けるのは簡単だ。厩舎に馬車のようなものは置いてないかな?」
「ああ、ないな」
「僕は足を地面につけられないくらいなんだ」
「つけなければいいさ」
「しかし歩くことができんのだ」
「じゃ、片足跳びだな」
ルーベン・ヘイズの態度は上品には程遠かったが、ホームズは見事な快活さで受け止めた。
「いいかな、ご主人」彼は言った。「これは本当に僕にとって大変なことなんだ。先に進めるならどんな方法でも気にしない」
「俺も気にせん」不機嫌な主人が言った。
「これは非常に大切なことなんだ。自転車を使わせてくれたら1ソブリン出してもいい」
主人は耳をそばだてた。
「どこに行きたいんだ?」
「ホールダネス館だ」
「見たところ、公爵のお友達かな?」主人が皮肉っぽい目で泥に汚れた私たちの服を見回しながら言った。
ホームズは愉快そうに笑った。
「ともかく、公爵は我々と会えば喜ぶはずだ」
「なぜだ?」
「失踪した息子の知らせを持ってきたからだ」
主人は目に見えるほどギクリとした。
「それじゃ、行き先がわかったのか?」
「リバプールから消息があった。警察はすぐにも見つかると思っている」
重い無精ひげの生えた顔にまた素早い変化が起きた。彼の態度は突然穏やかになった。
「俺には他の奴のようにあの公爵の幸運を願う理由はない」彼は言った。「俺は昔、御者頭だった。あいつの扱いはそれはひどいもんだった。嘘つきの雑穀商の言葉を真に受けて、あいつは俺を推薦状もなしに首にした。しかしリバプールで若様の消息があったと聞いて俺も嬉しい。だからあんたが館にその知らせを持っていくのなら手伝ってやろう」
「ありがとう」ホームズは言った。「最初に何か食べたいな。その後自転車を持って来てくれ」
「俺は自転車は持ってない」
ホームズはソブリン金貨を差し出した。
「本当だ。俺は自転車は一台も持ってない。館まで馬を二頭貸してやる」
「まあ、まあ」ホームズは言った。「何か食べた後にそれについて話し合おう」
私たちが石畳の食堂に二人きりになった時、驚くべき事に捻挫した足はあっという間に回復した。ほとんど夕暮れになっていた。そして我々は早朝から何も食べていなかったので、時間をかけて食事をした。ホームズは考え込んでいた。そして一、二度、彼は窓際まで歩いて行って熱心に外を眺めた。それはむさ苦しい中庭に面していた。一番向こうの隅に鍛冶場があり、小汚い少年が働いていた。反対側は厩舎になっていた。ホームズは窓まで行っては帰りを繰り返して、また席に戻った。その時彼は突然大きな叫びを上げて椅子から立ち上がった。
「なんと、ワトソン、僕は間違いなくつかんだぞ!」彼は叫んだ。「そうだ、そうだ、きっとそうだ。ワトソン、今日、牛の足跡を見たのを覚えているか?」
「ああ、何度か」
「どこで?」
「そうだな、いたるところだ。湿地にあった。小道にもあった。可哀想なハイデガーが死んだ現場近くにもあった」
「そのとおり。では、ワトソン、荒野で牛を何頭見かけた?」
「見た記憶がないな」
「おかしい、ワトソン。我々が通った道に沿ってずっと足跡があったのに、荒野全体に一頭の牛もいないとは。非常におかしい、ワトソン、どうだ?」
「そうだな、おかしいな」
「今、ワトソン、頑張って思い出してみてくれ。道の上の牛の足跡を思い出せるか?」
「ああ、できるよ」
「足跡は時々このようになっていたことを思い出せるか、ワトソン」彼はたくさんのパンくずをこのように並べた。 ―― :::::: ―― 「そしてこんな風に」 ―― :.:.:.:.:. ―― 「そしてたまにはこんな風に」 ―― . · . · . · .·「覚えているか?」
「いや、ダメだ」
「僕は覚えている。間違いなくそうだった。しかし、時間がある時に戻って確かめよう。ここから結論を導き出せないとは、僕は本当に愚かだった」
「その結論とは何なんだ?」
「ただ驚くべき牛だというだけだ。歩き、駆け、疾走する。いやはや!ワトソン、田舎宿の主人の頭でこんな目くらましを考え付くはずがない。鍛冶屋の少年以外、誰も見ていないようだな。ここを抜け出して何か発見できないか確認しよう」
今にも壊れそうな厩舎の中にタテガミがボサボサで手入れの出来ていない馬が二頭いた。ホームズはその一頭の後ろ足を持ち上げて大きな声で笑った。
「古い蹄鉄だが、新しく打ち直されている、 ―― 蹄鉄は古い、しかし釘は新しい。この事件は特筆に値するな。あの鍛冶場に行ってみよう」
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