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シャーロックホームズがどれくらい睡眠をとったかは分からない。しかし私が朝食に降りてきた時、彼は目の周りにできた隈でギラギラした目を一層輝かせ、青ざめてイライラしていた。椅子の周りの絨毯にタバコの吸殻と早刷りの朝刊が撒き散らされていた。テーブルの上に開かれた電報が置いてあった。
「これをどう思う、ワトソン?」彼が電報をこちらに投げながら尋ねた。
それはノーウッドから来たものだった。次のように書かれていた。
重要な新しい証拠を入手。マクファーレンの有罪は間違いなく確定。この件から手を引くことを忠告する。
レストレード
「容易ならぬ事態のようだな」私は言った。
「レストレードの小さな勝利の雄叫びだ」彼は苦笑いしながら答えた。「しかしこの件から手を引くのは時期尚早だろう。つまるところ、新しい重要な証拠とは諸刃の剣だ。もしかするとレストレードの想像するものとは全く違った方向に切り込む事になるかもしれない。朝食をとってくれ、ワトソン。一緒に出かけて、何が出来るか考えよう。今日は君の同行が、そして君の精神的助けが、きっと必要となるように思う」
ホームズは自分では朝食をとらなかった。極度に緊迫した時には、自分自身に食事を許さないという変わった習性のためだ。私は彼が自分の鉄のような強さを頼みして、完全な栄養失調でよろよろになったのを知っている。「今はエネルギーと神経の力を消化に使うのを容認できない」彼は、私の医学的抗議にそう答えたものだ。だから私はこの日の朝、彼が朝食に手をつけずに私と一緒にノーウッドに出発しても驚かなかった。いまだに下劣な見物人の一群がディープ・ディーン・ハウスを取り囲んでいた。それは私が想像していたような郊外住宅だった。門の中でレストレードは私たちを出迎えた。彼の顔は勝利に上気し、その態度は、はなはだ得意気だった。
「やあ、ホームズさん、もう私たちが間違っていると証明できましたかな?あなたの浮浪者は見つかりましたか?」彼は大声で言った。
「まだ何の結論も出していない」ホームズは答えた。
「しかしこっちは昨日結論を出しましたよ。しかも今や正しいことが証明されました。ですから今回は、警察がいささかリードしていることを認めるべきですな、ホームズさん」
「確かに、いつもと違う事が起きたと言いたげだな」ホームズは言った。
レストレードは高らかに笑った。
「あなたは誰よりも負かされるのが嫌いですな」彼は言った。「人間はいつでも自己流でやれると思ってはいけない、そうですな、ワトソン博士。こちらへどうぞ、よければ、紳士諸君、私は今回限りで、あなた方にこの犯罪を犯したのはジョン・マクファーレンだという確信を持たせることができると思いますな」
彼は通路を通り、向かいにある暗いホールの中に我々を案内した。
「ここが犯行後、若きマクファーレンが帽子を取りに来た場所に違いない」彼は言った。「さあ、これを見てください」芝居じみた突然さで彼はマッチを擦った。その光で漆喰の壁に血の染みが照らし出された。彼がマッチを近づけると、それがただの染みではないことが見て取れた。それはくっきりと押された親指の指紋だった。
「自慢の拡大鏡でご覧ください、ホームズさん」
「今そうするところだ」
「同じ指紋は二つと無いことはご存知でしょう?」
「そういう話だな」
「そうでしょう。ではその指紋を、こちらの私の命令で今朝取られたマクファーレンの右手の親指の蝋型と比較していただけますか」
蝋型からとった指紋を血の跡に近づけると、拡大鏡がなくてもこの二つが間違いなく同じ親指の指紋だと分かった。私はどう考えても不運な依頼人はおしまいだと感じた。
「これは決定的だ」レストレードが言った。
「確かに、これは決定的だ」私は思わず繰り返した。
「これは決定的だ」ホームズが言った。
彼の口調の何かが耳に残り、私は振り返って彼を見た。彼の表情に驚くべき変化が起きていた。彼の顔は内面の歓喜にゆがんでいた。目は星のように輝いていた。私には彼が発作的な笑いをこらえようとして、必死の努力をしているように見えた。
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