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「僕は、下にというのはそこを掘るという意味だと考えていた。だがもちろん、この言葉ですぐに自分が間違っていたと気付いた。『じゃあ、この下に地下室があるのか?』僕は叫んだ」
「『そうだ。家が出来た時からあるものだ。この扉を通ってそこへ降りよう』」
「僕とマスグレーヴは曲がりくねった石の階段を降りた。そしてマスグレーヴはマッチを擦って、真中に置いてあった樽の上の大きなランタンに火をつけた。その瞬間、この場所に最近やって来た人間が他にもいて、我々が遂に正しい場所にたどり着いたことが明白になった」
「そこは薪の貯蔵室として使われていた。しかし、床に散らばっていたはずの薪は、部屋の中心部分を綺麗にするために横に積み上げられていた。そこに大きくて重い敷石があり、真中に錆びた鉄の輪がついており、白黒のチェックのマフラーが結び付けられていた」
「『なんだ!』マスグレーヴは叫んだ。『これはブラントンのマフラーだ。これをあいつが巻いているのを見た確かな記憶がある。あの悪党はここで何をしていたんだ?』」
「僕の提案で、地元警察官を二人、立会人として呼んだ。そして僕はマフラーを引っ張ってその石を持ち上げようとした。しかし少ししか動かず、警官の一人に手助けしてもらってやっと片側に寄せることに成功した。黒い穴がぽっかりと開き我々全員が中を覗き込んだ。マスグレーヴは、片側にひざまずいてランタンを下に降ろしていた」
「床に4フィート角で、深さ7フィートの小さな穴が開いていた。この部屋の片側に、真鍮で縁取りされた木箱があった。蝶番のところから蓋が開かれていた。鍵穴に奇妙な古臭い鍵が刺さっていた。外側は分厚い埃の層に覆われ、湿気と虫で木が腐食しており、鉛色のカビが内側に広がっていた。僕がここに持っているような、古いコインと思われる金属の円盤が、箱の底にいくつか散らばっていた。だがそれ以外には何も入っていなかった」
「しかしながら、その時点では古い箱は意識に無かった。我々の目はその側にかがんでいるものに釘付けになったからだ。それは黒い服に身を包んだ男の死体だった。足を折り曲げてうずくまり、箱の端に額を乗せて箱の両側に手を伸ばしていた。この姿勢のために、うっ血した血液が全部顔に集まり、変形した赤黒い顔の見分けは誰もつかなかった。しかし、死体を引き揚げた時、身長、服装、髪、によってマスグレーヴはこの死体が間違いなく失踪したブラントンだという事を確信した。死後数日経っていた。しかしブラントンがどのようにして恐ろしい最期を遂げたかを示すような傷もあざも体に残されていはいなかった。彼の死体を地下室から取り出した時、着手した問題と同じくらいやっかいな別の問題に直面したことが分かった」
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