コンプリート・シャーロック・ホームズ
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既に説明したと思うが、廊下は広間を一周するバルコニーで区切られているが、反対側がまた廊下になっている。私は彼が見えなくなるまで待って、それから後をつけた。バルコニーのところに来た時、彼は反対側の廊下の端に到着していた。そして開いた扉から漏れる光で、彼が一つの部屋に入っていたのが見えた。この辺の部屋は全部、家具も無く空き部屋になっていたので、ここにやってきた理由は余計に謎に思えた。まるで彼がじっと立ちすくんでいるかのように、光は絶え間なく輝き続けていた。私は出来る限り音を立てずに廊下を忍び寄り、扉の隅から中を覗き込んだ。

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バリモアはろうそくをガラスに向かって掲げて、一つの窓にかがみこんでいた。彼は、荒野の暗闇を覗き込んでおり、半分こちらの方に向けられた横顔は、何かを予期して固まっているように見えた。数分間彼は熱心に外を見ながら立っていた。その後彼は深いため息を漏らし、苛立ったような身振りで明かりを消した。私はすぐに自分の部屋に戻った。そしてそのすぐ後に、こそこそした足音がもう一度やってきて、扉の前を横切って戻って行った。それからずいぶんたって、私がうつらうつらしていた時、どこかで鍵が回す音がした。しかしその音がどこから来たかは分からなかった。一体全体、これに何の意味があるのだろうか?想像もつかない。しかし、この家の闇の中で何か胡散臭い事が行われている。いずれ、我々で解明しよう。君がただ事実だけを報告するようにと指示したから、私は自分の考えを書いて、君の邪魔はしないよ。私は今朝、サー・ヘンリーと長い間話し合い、昨夜の私の観察に基づいて行動計画を練った。それについて、今回の手紙では書かないが、次の報告を楽しみに待っていてくれ。