コンプリート・シャーロック・ホームズ
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彼は見取り図を広げてホームズの膝の上に置いた。下図は、それを再掲したものだ。私は立ち上がり、ホームズの後ろに立って肩越しにじっくりと眺めた。

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「もちろん本当の簡略図ですし、私が不可欠だと思った点だけを対象にしています。これ以外の事は全部、後ほどご自分で確かめてください。さて最初に、殺人犯が家に入ったと仮定して、彼ないしは彼女はどのように侵入したか?間違いなく庭の道を通って裏口からです。そこからなら書斎へ直接行けます。それ以外の道ははるかに困難です。脱出も同じくこの道を通ったに違いありません。部屋から出る別の二つの道のうち、一つはスーザンが階段を駆け下りて来たのでふさがっていました。もう一つは真っ直ぐ教授の寝室に繋がっています。このため私はすぐに庭の道に注意を向けました。そこは直前の雨でびしょぬれで、間違いなく何らかの足跡が残っているはずだったからです」

「調査して分かった事は、私の相手は用心深い熟達した犯罪者だということです。道には足跡がありませんでした。しかし誰かが道に沿った草の縁の上を通っていた事、そして足跡を残さないために犯人がそうした事は疑いはありませんでした。はっきりした足跡の形は一つも見つけることができませんでしたが、草は踏まれていて、間違いなく誰かが通っていました。それは殺人犯でしかありえません。庭師も他の人間もその朝その場所には来なかったし、雨が降り出したのは前日の夜に入ってからでした」

「ちょっと待ってくれ」ホームズは言った。「その道はどこに続くんだ?」

「通りです」

「長さは?」

「百ヤードくらいですね」

「道が門をくぐる地点にきっと足跡があったはずだな?」

「残念ながら、そこで道はタイル貼りになっていました」

「そうか、通りの上には?」

「ありません、踏みにじられてぬかるみになっていました」

「チッチッ!それじゃ、草の上の足跡は、入る方向か、出る方向か?」

「なんとも言えません。輪郭はまったくありませんでした」

「大きかったかそれとも小さかったか?」

「見分けがつきませんでした」

ホームズはイライラして叫んだ。

「それから大雨が降って嵐のように風が吹いた」彼は言った。「今見たところで、このパリンプセストより判読が困難になっているだろうな。まあよし、どうしようもない。ホプキンズ、何一つ確認できないということを確認した後で、君はどうしたんだ」

「私はいろいろな事を確認したと思います、ホームズさん。誰かが慎重に外部から家に侵入したことは分かりました。私は次に廊下を調べました。そこはシュロの織物が敷かれていて、足跡はまったくつきません。これを進むと書斎の中まで行きます。そこはほとんど家具のない部屋です。主な家具は大きな作り付けの棚がついた書き物机です。棚には二列の引出しがあり、その間に小さなカップボードがあります。引出しは開いていましたが、カップボードには鍵がかけられていました。引出しはどうやら、いつも開いていたようです。そして貴重品は何も置かれていませんでした。カップボードには重要な書類がありました。しかしこれが触られた様子はありませんでした。そして教授は無くなった物がないと私にはっきりと証言しています。窃盗行為がなかったことは間違いありません」

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「私はここで青年の死体のところに行きました。棚の近くでした。図に印をつけたようにちょうど左側です。刺し傷は首の右側で後ろから前に刺されていました。ですから自分で傷をつけるというのはほとんど不可能です」

「ナイフの上に倒れたのでない限り」ホームズは言った。

「その通りです。それも一瞬考えました。しかしナイフは死体から何フィートか離れたところで見つかっていますので、ちょっと無理なようです。もちろん、それに加えて青年の死に際の言葉があります。そして最後に、この非常に重要な証拠品があります。これは死体が右手に握っていたものです」