コンプリート・シャーロック・ホームズ
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次の日の朝食後、マイクロフトホームズとレストレードが約束どおりやってきていた。そしてシャーロックホームズは前の日の進捗状況を説明していた。警部は我々が強盗を自白したことに首を振った。

「警察ではそういうことは出来ません、ホームズさん」彼は言った。「あなたが私たち以上の結果を得られるのも無理はない。しかし最近あなたはちょっとやりすぎです。あなたもあなたの友人も面倒なことになりますよ」

「美しき母国、イギリスのため、 ―― ああ、ワトソン?この国の祭壇にささげられる犠牲だ。しかしどう思う?マイクロフト」

「素晴らしい、シャーロック、あっぱれだ!しかし、それにどんな利用価値があるんだ?」

ホームズはテーブルに置いてあったデイリーテレグラフを取り上げた。

「今日のピエロの広告は読んだか?」

「何?別の広告か?」

「そうだ、このとおり」

「今夜。同じ時刻。同じ場所。ノックは二回。生死に関わるほど重要。お前の安全が脅かされている」
「ピエロ」

「なんと!」レストレードが叫んだ。「もし、彼がこれに答えれば彼を捕まえられる!」

「それこそこの広告を出す時に僕が考えたことだ。もし君たち二人が都合をつけて8時頃コールフィールドガーデンに我々と一緒に来れば、もしかすると解決に少し近づくことが出来るかもしれない」

ホームズの最も驚くべき特徴の一つは、彼がこれ以上働いても有効でないと確信した時はいつでも頭脳を活動から遠ざけ、全ての考えをもっと気軽な問題に向ける能力だった。私は彼がこの記念すべき日いっぱいラッソの多声モテットに関して着手していた論文に没頭した事を覚えている。私はといえば、この無関心の能力を持っていないので、結果的にその日が果てしなく長く感じられた。この事件の国家的な大問題、最高責任者の不安、我々が試みる実験そのものの性質、 ―― 全てが一緒になって私の気持ちを刺激した。軽い夕食の後ついに出かけることになった時、私は救われた気持ちだった。レストレードとマイクロフトは約束どおりグロスターロード駅の外で我々と落ち合った。オーバーシュタインの家の半地下の扉は前の夜から開けたままだった、そしてマイクロフトホームズが腹を立て、断固として手すりを乗り越えるのを拒んだので、そこから入って玄関の扉を開けるために、私にとって必要なことだった。九時までに我々は犯人を辛抱強く待ちながら全員書斎に座っていた。

一時間が経ち、二時間が経った。十一時の鐘が鳴った時、規則正しい大寺院の時計の拍子は、我々の希望の葬送歌のように響いた。レストレードとマイクロフトは一分に二度懐中時計を見ながら座ったままそわそわしていた。ホームズは静かに落ち着いて座っていた。彼のまぶたは半分閉じられていたが、全感覚は研ぎ澄まされていた。彼はビクッとして頭をもたげた。

「来たぞ」彼は言った。

こそこそした足跡が扉の前を横切っていた。それが今戻ってきた。我々は外で足を引きずるような音を聞いた、その後ノッカーで鋭いノックが二回鳴った。ホームズは我々に座ったままでいるように身振りで指示して立ち上がった。ホールのガス灯はただの小さな光の点に見えた。彼は外の扉を開け、その後暗い人影が彼の側を通り過ぎると、彼は扉を閉め鍵を掛けた。「こっちだ!」彼がそう言う声が聞こえた。そして一瞬の後、我々の男が目の前に立っていた。ホームズは彼のすぐ後ろについていた。そして男が驚きと恐怖の叫びをあげて振り返った時、彼は男の襟首をつかんで部屋の中に投げ込んだ。捕まえた男がバランスを取り戻す前に、扉が閉められてホームズがその前に立ちはだかった。男は周りを睨み、よろめき、気を失って床に倒れた。その衝撃で、広いつばの帽子が頭から飛び、襟巻きが口元から滑り落ちた。そこには長く薄い口ひげと、もの柔らかで二枚目の繊細な表情のヴァレンタイン・ウォルター大佐がいた。

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ホームズは驚きの口笛を吹いた。

「今回は僕を愚か者とけなしてもいいよ、ワトソン」彼は言った。「これは僕が探していた鳥ではなかった」

「こいつは誰だ?」マイクロフトが必死に尋ねた。

「故ジェイムズ・ウォルターの弟、潜水艦局の局長。そうか、そうか。カードの手がみえたぞ。彼はすぐに気がつくだろう。彼の尋問は僕に任してくれ」

我々は倒れた体をソファに運んだ。ここで捕まえられた男は体を起こし、恐怖に打たれた顔つきであたりを見回し、自分の目が信じられないというように額を手でぬぐった。

「これは何事だ?」彼は尋ねた。「私はここへオーバーシュタインさんを訪ねてきたんだ」

「何もかも分かっているんだ、ウォルター大佐」ホームズが言った。「どうやって英国紳士がこんな行動をとることが出来たかは僕には理解できない。しかしあなたがオーバーシュタインと文通していた事は、すべて我々の知るところだ。また、カドーガン・ウェスト青年の死に関係する状況についても同様だ。あなたには良心の呵責を感じて自白をして、わずかでも自分の対面を守るように忠告したい。あなたに話してもらわないと分からない細かい部分がまだちょっと残っているのだ」

男はうめき声を上げて両手に顔をうずめた。私たちは待っていたが彼は何も言わなかった。

「いいか」ホームズは言った。「重要なことは全て分かっている。あなたが金に困っていたこと、お兄さんが持っていた鍵の型を取ったこと、そしてオーバーシュタインと連絡を取り合うようになったこと、彼はあなたの手紙にデイリーテレグラフの広告欄を通じて返事をしていたことは知っている。あなたが月曜の夜に事務所に行った事は分かっている。しかしあなたはカドーガン・ウェスト青年に目撃され後をつけられた。彼はおそらく以前から疑っていたのだ。彼は盗みを目撃したが、周りに知らせることが出来なかった。その設計図をロンドンにいる兄の元に持って行こうとしているという可能性もあったからだ。彼は個人的な用事をすべてかなぐり捨て、善良な市民として、霧の中、あなたのうしろにぴったりとついて、この家にたどり着くまで追いかけた。そこで彼は止めに入ってきた。そしてその時だ、ウォルター大佐。あなたが反逆罪に加えて殺人という恐ろしい犯罪を犯したのは」

「私はやっていません!私はやっていません!神の前で私はやっていないと誓います!」哀れな捕虜が叫んだ。

「では話してもらおう。あなたがカドーガン・ウェストを客車の屋根に乗せる前にどのようにして彼は死んだんだ」

「言います。言うと誓います。他のことは私がやりました。それは自白します。あなたの言うとおりです。払わねばならない株の債務があったのです。私はどうしようもなく金が必要でした。オーバーシュタインは私に5000ポンド出すと言ってきました。それだけあれば破滅から免れられます。しかし殺人については、私はあなたと同じくらい潔白です」

「では、何が起きたのだ?」