コンプリート・シャーロック・ホームズ
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彼は少し心が軽くなった。彼自身の逃亡の準備はすでに始まっていた。マクマードは支部に行った。集会は既に始まっていた。複雑な合言葉と返し言葉を交わして、しっかりと固められた外と内の護衛を抜けることができた。彼が入ると喜びと歓迎のざわめきが起こった。長い部屋は人でいっぱいだった。煙草の煙のもやの向こうには、モジャモジャの黒い顎鬚の支部長、残忍で非友好的な表情のボールドウィン、ハゲワシのような顔の書記のハラウェイ、それ以外のこの支部の指導者が他に12人いた。彼はこの情報について相談すべき人間が揃っていたのを喜んだ。

「いや、お前に会えて嬉しいよ、同志!」議長が叫んだ。「賢い裁定者の正しい判断が必要な件があるんだ」

「ランダーとイーガンだ」彼は腰を下ろし、近くの男たちついて説明した。「彼らは二人ともスタイルタウンでクラッベ老人を撃った件で支部の懸賞金を主張している。どっちの弾が当たったか誰に言えるんだ?」

マクマードは立ち上がって手を上げた。彼の表情が聴衆の注意を引き付けた。何が起こるのかと、座が静まり返った。

「偉大なる支部長」彼は厳かな声で言った。「緊急動議を申し立てたい!」

「マクマード同志が緊急動議を申し立てた」マギンティが言った。「これは支部の規定で優先権のある要求だ。さあ、同志、説明しろ」

マクマードはポケットから手紙を取り出した。

「偉大なる支部長と同胞諸君」彼は言った。「今日は悪いニュースを持ってきた。しかしこれを知り、話し合うことは何の警告も無しに攻撃されるよりも、いいことだ。そんなことになれば、我々全員は破滅だ。俺は情報を入手した。この国で一番強力かつ財力のある団体が、我々を破滅させようと結束を固めた。しかもこの瞬間にも、ピンカートン社の探偵、バーディ・エドワーズという男が、この谷で活動している。彼は、我々の多数が縛り首になり、この部屋の全員を重罪房に送り込む証拠を集めている。俺が緊急動議を申し立てたのは、これを討議したいからだ」

部屋の中は静まり返った。その沈黙を議長が破った。

「何か証拠があるのか?マクマード同志」彼は尋ねた。

「俺が入手したこの手紙の中にある」マクマードは言った。彼は問題の一節を読み上げた。これ以上、この手紙に関する詳細を話したり、この手紙自体を渡せないのは、俺の名誉の問題だ。しかし手紙の内容で、この支部の利害に関係する者は、他にはない。これは保証する。俺はこの問題を聞いたとおりの形で伝えている」

「いいかな、議長」古い同胞の一人が言った。「バーディ・エドワーズについては聞いたことがある。ピンカートン探偵社では一番の腕利きだという評判だ」

「顔を見たものはいるか?」マギンティが尋ねた。

「ああ」マクマードが言った。「俺だ」

驚きのざわめきが広間に広がった。

「奴は俺達の手の中だ」マクマードは勝ち誇ったような笑顔を浮かべて続けた。「もし素早く巧妙に行動すれば、この件には簡単に決着がつく。もし全員の信頼と助力があれば、恐れる事はほとんどない」

「そもそも、何を恐れにゃならんのだ?我々のことをどうやって嗅ぎつけられるんだ?」

「もし全員があんたのように屈強ならそうも言えるかもしれない、議員。しかしこの男の後ろには無数の資本家がついている。この支部の全員の中で誰一人買収される者がいないと言えるか?奴は我々の秘密をきっとつかむ。もしかすると既に手に入れているかもしれない。打つ手は一つしかない」

「この谷から生かして返さん」ボールドウィンが言った。

マクマードはうなずいた。「よく言った、ボールドウィン同志」彼は言った。「俺とお前は意見の食い違いがあったが、今夜は完全に一致する発言をしたな」

「で、そいつはどこにいる?どこで会えるんだ?」

「偉大なる支部長」マクマードは真剣な口調で言った。「これは支部員全員で議論するには重要すぎる問題だと申し上げたい。ここにいる人間に疑いをかけるつもりは毛頭ない。しかし噂が一言でもこの男の耳に入れば、彼を捕まえるチャンスはなくなるだろう。俺は信頼できる委員会を選任するように要求したい、議長。あなたと、もし俺が提言するとすれば、こちらのボールドウィン同志、それから他に五名程度だ。そうすれば、俺は知っていることとどうすればいいかという提言を安心して話せる」