コンプリート・シャーロック・ホームズ
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マクマードは後ずさりした。「生まれてこのかた、お前や忌々しいポリ公には、一人のダチもいないぞ」彼は言った。

「知り合いが全員ダチというわけじゃない」警部はにっこりして言った。「お前はシカゴのジャック・マクマードだな。間違いない。シラを切るな!」

マクマードは肩をすぼめた。「シラを切っているわけではない」彼は言った。「俺が自分の名前を恥じているとでも思っているのか?」

「まあ、そう思っても当然だな」

「一体どういう意味だ?」彼は拳を握り締めて吠えた。

「だめだよ、ジャック。俺にはハッタリは効かんよ。俺はこの呪われた石炭置き場に来る前はシカゴの警官だった。一度見たシカゴの悪党は忘れん」

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マクマードはうつむいた。「まさかシカゴ中央警察のマービンじゃないだろうな!」彼は叫んだ。

「そのまさかだ。テディ・マーヴィンとは俺のことだ。よければお前の役に立つぞ。ジョナス・ピントがシカゴで撃たれたことは忘れてないからな」

「俺は撃っていない」

「撃っていない?これはまた見事に中立的な証言だ。まあ、あいつが死んでお前は本当に助かったな。そうでなければお前を贋金利用で逮捕していただろう。まあ、過ぎたことはよかろう。ここだけの話だがな、 ―― これを言うのは俺の職務からちょっと外れているかもしらんが ―― 、警察はお前に対して確実な証拠をまったくつかめなかった。だから、明日シカゴに帰っても問題ないぞ」

「俺はここで上手くやっているんだ」

「せっかくいい事を教えてやったのに、礼の一つもなしか。このすねた犬野郎!」

「あんたは俺に良くしてくれたようだな、ありがとうと言うよ」マクマードは慇懃に言った。

「お前がまっとうに暮らしている限り、礼は結構だ」警部は言った。「しかし、いいか!もしお前が今後道を外れれば、話は別だ!おやすみ、マクマード、 ―― それから、おやすみ、議員さん」