寝室に入って目にしたものは、恐ろしい光景だった。ブレッシントンのぶよぶよした体の印象はすでに説明したが、フックに宙吊りになると、それがほとんど人間とは思えない姿になっていた。首は羽をむしられた鶏のように伸び、対照的に他の部分がさらに肥満して不自然に見えた。彼は丈の長いガウンだけを身にまとっていた。膨れ上がった踝と見苦しい足がその下からはっきりとのぞいていた。その側には、手帳にメモを取っている有能そうな警部が立っていた。
「ああ、ホームズさん」ホームズが入ると警部は元気よく言った。「お会いできて嬉しいです」
「おはよう、ランナー」ホームズは答えた。「僕を邪魔者扱いしないだろうね。この事件に繋がる出来事を聞いたかね?」
「ええ、それらしい話は」
「結論は出たかね?」
「私が見る限り、この男は恐怖で気が触れたようですね。見てのとおり、ベッドには寝た形跡があります。すごく深い窪みですね。ご存知のように、朝五時頃は自殺の一番多い時間帯です。彼が首を吊ったのもその頃でしょう。どうもよくよく考えての行動だったようです」
「筋肉の硬直具合から判断して、死後三時間というところですね」私は言った。
「部屋に何か変わったことは無かったか?」ホームズが尋ねた。
「洗面台の上にドライバーと木ねじがいくつかありました。夜間、かなり多量の煙草を吸ったようです。これが暖炉から拾い上げた四本の葉巻の吸い殻しです」
「フム!」ホームズは言った。「葉巻ホルダーは見つかったか?」
「いいえ、見つかりません」
「それでは葉巻入れは?」
「ええ、コートのポケットにありました」
ホームズはそれを開けて一本だけ残っていた葉巻の臭いをかいだ。
「ああ、こいつはハバナだ。他のものは変わった種類の葉巻だ。これはドイツが自国の東インド植民地から輸入しているものだ。普通は藁に包まれていて、どの銘柄よりも細長い」ホームズは四本の吸い殻を取り上げ、小さな拡大鏡で調べた。
「二つはホルダーに差して吸い、二つはそのまま吸っている」ホームズは言った。「二つはあまり切れないナイフで切られ、もう二つは見事な歯で噛み切られている。ランナー、これは自殺なんかじゃない。入念に計画された冷酷な殺人だ」
「そんな馬鹿な!」警部は叫んだ。
「どうしてだ?」
「なぜ犯人は、彼の首を吊るような面倒な方法をとる必要があるのですか?」
「それはこれから見つけることだ」
「どのようにして侵入できたのですか?」
「正面玄関からだ」
「朝、閂が掛かっていました」
「では、犯人が出た後に掛けられたのだ」
「どうして分かるんですか?」
「犯人の足跡を見たからだ。ちょっとの間失礼する。多分もっと詳しいことを教えられると思うよ」