コンプリート・シャーロック・ホームズ
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「最近は仕事がかなり忙しいようだな」ホームズは私をじっと見つめて言った。

「そうだ、今日は忙しかったよ」私は答えた。「君には馬鹿に見えるだろうが、どうやって推理したのか全く分からないな」

ホームズは一人でクスクス笑った。

「ワトソン、僕は君の習慣を知っているという点で有利だ」ホームズは言った。「君は往診を一巡する距離が短い場合は歩いて行くが、長くなると馬車を使う。君の靴を見ると、かなり履き込んでいるが、泥汚れは全く無い。今君が、馬車を使おうと思うほど忙しいことは疑問の余地が無いね」

「素晴らしい!」私は叫んだ。

「初歩だよ」ホームズは言った。「これは推理家の技量の中で、周囲を感嘆させることができる一例だ。他の人間は、推理の基盤となる小さな点を見逃しているからだ。君の面白い作品の中にも、同じような効果を使ったものがあるんじゃないか、ワトソン。まったく不誠実な話だが、君もこれと同じように事件の事実の一部を決して読者に知らせず、自分の手の中に隠しておく。今、僕はその読者の立場にある。僕が現在調査している事件は、これまで困惑させられてきた中でも特に奇妙な事件だ。いくつかの手掛かりは入手したが、一つ二つ必要な手掛かりが欠けていて、全体像を完成させることができない。しかしいずれその手掛かりをつかむよ、ワトソン。つかんでみせる!」ホームズの目は輝き、こけた頬に赤味が走った。ほんの一瞬、熱く情熱的な性格が現れたが、その一瞬だけだった。私がもう一度ホームズに目をやると、インディアンのように冷静な顔に戻っていた。その冷静な顔は、ホームズのことを大多数の人が人間と言うよりは機械とみなす要因となってきたものだ。

「この事件は興味ある特徴を備えている」ホームズは言った。「それも並外れて興味ある特徴と言ってもいいかもしれない。僕は既にこの事件の調査に着手した。そして僕の考えでは、解決は目前のところまで来ている。君が最後の段階で同行してくれれば、非常に助かるのだが」

「そりゃ嬉しいな」

「明日、はるばるオールダーショットまで行けるか?」

「きっとジャクソンが僕の診療を代わってくれると思う」

「それはよかった。ウォータールーから 11:10 の列車で発ちたい」

「それなら時間は充分にある」

「じゃあ、あまり眠くなければ、起きた事とこれからすべき事について概略を話そう」

「君が来る前は眠かった。今は完全に目が覚めたよ」

「事件の重要な点は何一つ省略せず、できる限り簡潔に話そう。既にこの事件ついて何かで耳にしている可能性もあるな。僕が今調査しているのはオールダーショット、ロイヤル・マンスターのバークレイ大佐殺害疑惑だ」

「その事件については何も知らないな」

「その地方以外ではあまり注目されていない。事件が起きたのはほんの二日前だ。これから、事件を簡単に説明しよう」