コンプリート・シャーロック・ホームズ
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我々が出て行くと辻馬車が通りがかったので、ホームズが呼び止めた。

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「ウォーリントンまでどれくらいの距離だ?」彼は訪ねた。

「一マイルくらいです」

「結構。飛び乗れ、ワトソン。鉄を熱いうちに叩いておかねば。この事件は単純だが、細かい点で一つ、二つ勉強になる部分がある。電報局の側を通ったら停めてくれ、御者君」

ホームズは短い電報を出し、それ以降の道中は太陽が顔に当たらないように帽子を鼻のところまで傾けて馬車の中でシートにもたれかかっていた。御者は我々がさっき後にした家とたいして変わらない家の前で馬車を停めた。ホームズは御者に待つように指示し、ドアのノッカーに手をかけた。その時扉が開き黒服を着て艶のある帽子を被った青年が、心配そうな表情で戸口に現われた。

「カッシングさんは在宅ですか?」ホームズが言った。

「サラ・カッシングさんは非常に重い病気です」彼は言った。「彼女は昨日から非常に深刻な脳障害を患っています。彼女の医者として誰にも面会は許可できません。十日後にもう一度来られることをお勧めします」彼は手袋をはめて扉を閉め、通りを勢いよく歩いていった。

「会えませんか。そうですか」ホームズは楽しそうに言った。

「どちらにしても、彼女はそんなに話せんし、話さんだろうな」

「彼女が何もかも話すなどと夢を見ていたわけではない。僕はただ彼女を一目見たかっただけだ。しかし必要なものはすべて入手したと思う。どこか、こましなホテルに連れて行ってくれ、御者君。そこで昼食をして、それからレストレードに会いに警察署に寄ろう」

私達は一緒に楽しい昼食をとった。その間ホームズはバイオリンの話以外はしなかった。彼は、物凄く嬉しそうに、どうやって少なくとも500ギニーの値打ちのあるストラディバリウスをトテナムコートロードのユダヤ人古物商から55シリングで買ったか、話していた。ここから、パガニーニを語り始めた。私達はこのとんでもない男が次から次に逸話を話す間、一本のクラレットで一時間座っていた。昼下がりの時刻をとうに過ぎ、我々が警察署に着くまでに暑いギラギラした光は穏やかな光へと弱まっていた。レストレードは戸口で我々を待っていた。

「あなた宛に電報です、ホームズさん」彼は言った。

「ハ!これは返信だな!」彼はそれを破って開けた。それをさっと見て、丸めてポケットに入れた。「すべて問題なしだ」彼は言った。

「何か分かったのですか?」

「すべて分かったよ!」

「何ですって!」レストレードは驚いて彼を見つめた。「ご冗談でしょう」

「僕は人生でこれ以上真面目だったことはない。衝撃的な犯罪が行われた。そして僕はその詳細をすべてはっきりさせたと思っている」

「それで犯人は?」

ホームズは名刺の裏にいくつか単語を走り書きし、それをレストレードに投げた。

「それが犯人の名前だ」彼は言った。「いくら急がしても明日の夜までには逮捕状が取れないだろう。この事件に関して僕の名前は全く出ないようにして欲しいな。僕が関係したいのは、解決するのが、ある程度困難な犯罪だけだ。行こう、ワトソン」我々はレストレードがまだ嬉しそうな顔でホームズが投げた名刺を睨みつけているのを残して、一緒に駅まで足早に歩いて行った。