コンプリート・シャーロック・ホームズ
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そこは二階建ての煉瓦の家が立ち並ぶ非常に長い通りだった。きちんと並んで建てられた家には、白い石のステップがついていた。エプロンをかけた噂好きの女が何人か戸口に集まっていた。通りを半分ほど行くとレストレードは立ち止まり、あるドアをノックした、小さな召使の少女が扉を開いた。ミス・カッシングは私達が案内された居間に座っていた。彼女は落ち着いた顔つきの女性だった。つぶらな優しい目をして、白髪混じりの巻き毛が両側のコメカミにかかっていた。編みかけの椅子カバーが膝の上にあり、色々な色の絹糸が入った籠はすぐ側の丸椅子の上に置かれていた。

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「あれは納屋に置いています。あの恐ろしいものは」彼女はレストレードが入ってくると言った。「一緒に持って帰ってもらえないでしょうか」

「そうしましょう、ミス・カッシング。私はただ友人のホームズ氏があなたの前でそれを見るまでここに置いていただけです」

「なぜ私の前で?」

「彼があなたに質問したいという場合に備えてです」

「私に質問して何になるんでしょうか?私はこの件について何も知らないと申し上げたじゃありませんか」

「そうですね」ホームズはなだめるように言った。「きっとあなたはこの件でもう十分大変な思いをされたでしょう」

「本当にそうなんです。私は静かに隠居暮らしをしている人間です。新聞に自分の名前が載って警察が家に来るなんてこれまでありませんでした。あれはここに持って来させませんよ、レストレードさん。もし見たければ納屋に行ってください」

それは家の後ろの狭い庭にある小さな納屋だった。レストレードは中に入って茶色い紙と糸と一緒に小さなベージュ色のボール箱を持って出てきた。小道の突き当たりにベンチがあったので、レストレードが一つずつ手渡す品物をホームズが調べている間、私達はそこに座った。

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「この紐は非常に興味深い」彼はそれを光にかざして臭いをかぎながら言った。「この紐をどう思う、レストレード?」

「タールがついてますね」

「その通り。これはタール紐だ。君は間違いなく、両側の二つのほつれからミス・カッシングが紐をハサミで切ったことにも気づいていただろう。これは重要だ」

「何が重要なのか分かりませんが」レストレードは言った。

「結び目がそのまま残っているというのが重要だ。そしてこの結び目には奇妙な特徴がある」

「非常にきちんと結んであります。私はそのことは既に書き記しています」レストレードは自慢げに言った。

「じゃ、糸はもういいな」ホームズはにやりとして言った。「次は包み紙だ。茶色の紙、はっきりとコーヒーの臭いがする。何、気づかなかったのか?これは間違えようがないと思う。住所はちょっと乱れた字で書かれているな。『クロイドン、クロス街、S.カッシング様』先の太いペンで書かれている。多分、Jペンだ。それに非常に質の悪いインク。Croydonという単語は最初 i と書かれて、y に書き直してある。それで、この小包を出したのは男だ、 ―― 筆跡が明らかに男っぽい ―― 、教育はそれほど受けておらず、クロイドンの町に詳しくない。ここまでは間違いない!箱はベージュの甘露煙草の半ポンド箱。左の底の角に二つ親指の跡がある以外何も変わった所はない。中には生皮などを保存するのに使ったりする、荒っぽい商業目的の粗塩が詰まっている。そしてその中にこの非常に奇妙な内容物が埋まっていた」

彼は話しながら二つの耳を取り出した。そしてボール箱を膝に置き、耳を細かく調べた、その間、レストレードと私は、彼の両側から覗き込み、この恐ろしい遺物と、考え深げで熱心なホームズの顔に交互に目をやった。遂に彼はそれを箱にもう一度戻し、しばらく座ったままじっくり考え込んでいた。

「もちろん、君も分かっただろう」彼は遂に言った。「この二つの耳は同一人物のものではない」

「ええ、気づきました。しかし、これが解剖室での生徒の悪ふざけだとすれば、片方ずつの耳を二つ合わせて送ることは簡単なことでしょう。

「その通り。しかしこれは悪ふざけではない」

「確信があるのですか?」

「確証はないが、学生の悪ふざけというのはまずあり得ない。解剖室の死体には防腐剤が注入されている。この耳にはその痕跡が全くない。しかも、この耳は真新しい。これは鈍い刃物で切り取られている。もし医学生がやったのならまずそんなことは起こらない。さらに石炭酸かエタノールが防腐剤として使わていれば、医学の心得がある者に思えるかもしれないが、これは粗塩を使っている。繰り返して言うが、これは悪ふざけではない。我々は重大な犯罪行為を捜査しているのだ」