「さあ、ワトソン」彼は言った。「聖ルカ寮に行く時間だ。朝食抜きでいいかな?」
「もちろん」
「ソームズは何かいい知らせを伝えてやるまで、死ぬほどやきもきしているだろう」
「いい知らせを伝えられそうなのか?」
「そう思う」
「結論が出たのか?」
「そうだ、ワトソン、僕は事件を解決した」
「しかしどうやって新しい証拠を見つけたんだ?」
「ハ!六時にベッドを抜けだしたのは無駄ではなかった。僕は二時間歩き回って少なくとも5マイルは行った。そしてその甲斐があった。これを見ろ!」
彼は手を差し出した。手の平に三つの小さな黒いパン生地のような粘土のピラミッドがあった。
「これは、ホームズ、昨日は二つだけだったじゃないか」
「今朝、もう一つ見つけた。三番目の物があった場所が、一番目と二番目の出所でもあるというのは、道理にかなった主張じゃないか。どうだ、ワトソン?さあ、行ってソームズの苦悩を晴らしてやろう」
不幸な個人指導教師は、部屋で私たちと会った時、確かに気の毒なほど興奮していた。あと数時間で試験が始まるのに、彼はいまだに事実を公表する事と、犯人がこの高額の奨学金試験に参加するのを認める事の間で板ばさみになっていた。彼はほとんどじっと立っていられなかった。彼の動揺はすさまじく、必死に両手を差し出してホームズめがけて走ってきた。
「来て下さってありがとうございます!見込みがなくて事件を放棄されたのではないかと心配していました。私はどうすればいいですか?試験を始めますか?」
「ええ、必ず始めてください」
「しかし悪人は?」
「彼は参加しません」
「犯人が分かったのですか?」
「そう考えています。もしこの事件を公表しないのなら、私たちはしかるべき権限を持って、少人数の私的な軍法会議を結成しなければなりません。ソームズさん、よければあなたはそちらへ!ワトソン、君はここだ!僕は真中の肘掛け椅子に座る。これで身に覚えがある人間に、相当効果的に恐怖心を与えられると思う。ベルを鳴らしてください!」
バニスターが入ってきた。そして裁判官のような我々の態度を見て明らかに驚き、おびえて縮み上がった。
「扉を閉めてくれ」ホームズが言った。「さあ、バニスター、昨日の出来事の真実を話してもらおうか?」
彼は生え際まで血の気が失せた。
「全部お話しました」
「何か言い忘れたものはないか?」
「何もありません」
「よし、では、君にちょっとヒントをやろう。君が昨日あの椅子に座った時、部屋に誰がいたか分かる物を隠すためにそうしたのではないのか?」
バニスターの顔は恐ろしく真っ青になった。
「いいえ、もちろん違います」
「これはただのヒントだ」ホームズは穏やかに言った。「僕がそれを証明できないことは率直に認める。しかし可能性は十分あるようだ。ソームズさんが目を離すや否や、君は寝室に隠れていた男を逃がしたのだからな」
バニスターは乾いた唇をなめた。
「誰もいませんでした」
「ああ、残念だな、バニスター。ここまでお前は真実を話していたかもしれないが、しかし今お前は嘘をついた」
男はふてくされた反抗的な表情になった。
「誰もいませんでした」
「おい、おい、バニスター!」
「いいえ、誰もいませんでした」
「それなら、お前からもう新しい情報は聞き出せないな。この部屋に残っていてもらおうか?寝室の扉の近くのそこに立っていてくれ。さて、ソームズさん、大変お手数ですがお願いします。ギルクリスト青年の部屋まで上がっていって、彼にあなたの部屋まで下りてくるように頼んでください」
個人指導教師はすぐに彼の生徒を連れて戻ってきた。彼はいい体格の男だった。背が高くしなやかで、敏捷な弾むような足取りで、愛想のよい正直そうな顔をしていた。彼は青い目で私たちを一人づつ不安そうに見ると、最後に遠くの隅にいる完全に落ち込んだ表情のバニスターをじっと見た。
「扉を閉めてください」ホームズは言った。「さあ、ギルクリスト君、ここには他に誰もいない。我々の間で話すことは一切も他人の知るところとはならない。お互い、完全に腹を割って話すことができる状況だ。ギルクリスト君、君のように立派な男が、どうして昨日のような行動をとることになったのか聞かせてもらえるか?」
不幸な青年はたじろいで後ずさった。そして恐怖と非難をいっぱいに込めてバニスターをちらりと見た。
「違います、違います、ギルクリストさん。私は一言も言っていません、 ―― 一言も!」使用人は叫んだ。
「言っていなかったが、もう今は言ってしまった」ホームズが言った。「さあ、バニスターが口を滑らした以上、君は絶体絶命だ。正直に白状する以外にチャンスがないことはもう分かるだろう」
一瞬ギルクリストは手を上げて、ひきつった顔を抑えようとした。その後、彼は机の側にひざまずき、両手に顔をうずめ、激しくすすり泣きを始めた。